三浦しをんさんの『舟を編む』を紹介します。
【1行あらすじ】舟を編む(著者 三浦しをん)
タイトル:『舟を編む』
著者:三浦しをん
あらすじ:株式会社玄武書房の辞書編集部が新しい辞書「大渡海」の刊行を目指す物語。
【感想】舟を編む(著者 三浦しをん)
辞書ができるまで
辞書がどうやってできるのか、考えたことはありますでしょうか。
私はこの本を読んで初めて「辞書を作る」ということを意識しました。
この本を読むと辞書ができるまでの流れと辞書作りには多くの人が関わっていることが分かります。
辞書編集部のメンバーだけで辞書が作られているわけではなく、
辞書編集部のメンバーをサポートする家族、
原稿を執筆する専門家や辞書の紙を作る製紙会社の方々、
用例確認を行う学生アルバイトの方々など多くの人が関わっています。
ただ一つの部屋に閉じこもって作業をするのではなく、
様々な人と関わりながら辞書が作られていく過程を学ぶこともできます。
1つの辞書が刊行されるまでは長い月日が必要なため、
辞書編集部のメンバーにも入れ替えがあります。
最初に辞書の刊行を目指した編集者の荒木さんと松本先生の強い熱意が
馬締さんに伝わり、西岡さんや新入社員の岸辺さんに波及していく感じが心地よい物語となっています。
適材適所ということ
私が『舟を編む』を読んで感じたことは、
人には向き不向きがあり、
向いている場所、ものに出会えればどんな人でも能力を発揮することができるということ
です。
新しい辞書「大渡海」を作るために編集者の荒木さんがまず行ったことが、
辞書編集部に人員を追加することです。
そこで見出されたのが馬締さんでした。
荒木さんの「島」をなんと説明するかという問いに、下記のように答えた馬締さん。
「『まわりを水に囲まれ、あるいは水に隔てられた、比較的小さな陸地』と言うのがいいかな。いやいや、それでもたりない。『ヤクザの縄張り』の意味を含んでいないもんな。『まわりから区別された土地』と言えばどうだろう」
三浦しをん『舟を編む』株式会社光文社(2011年発行)p20
元々は営業部に所属していましたが、部署内の評価は低く埋もれていた人材でした。
ただ急に訪れた荒木さんの質問に、思考を巡らし上記のように回答する様子は辞書作りに適しているように映ります。
馬締さんは慣れない仕事ながら、純粋に辞書作りに向き合っていきます。
一方で、馬締さんが配属される前から辞書編集部に所属していた西岡さんに対する荒木さんの評価は、
そつがないが辞書作りには不向き。
辞書作りに熱中する辞書編集部のメンバーを冷静に見ている描写もありました。
そんな西岡さんですが物語が進むにつれ、「大渡海」編纂における自分の役割を見出していきます。
この本を読むと、向き不向きや仕事への携わり方について考えさせられます。
ラブレターが繋ぐのは
馬締さんは同じアパートに住む香具矢さんにラブレターを書きます。
それがとても古風な表現で一見して伝わりにくい(ある意味趣がある)ラブレターです。
ラブレターといえば、自分と好きな人を繋ぐ手紙ですよね。
馬締さんが書いたラブレターは馬締さんと香具矢さんを繋ぐものであると同時に、
他にも重要な役割を果たしました。
ただ・・・このやり方を現実で行おうとすると、
下手したらハラスメントになるかもしれませんので私は推奨できません(笑)
馬締さんの人柄と辞書編集部のメンバーの関係性があってこそのことですね。
ラブレターが果たすもう一つの役割が何かは、
是非『舟を編む』を読んで確認してみてください!
【こんな人におすすめ】舟を編む(著者 三浦しをん)
この本は下記のような人におすすめです。
・辞書作りや出版業界に興味がある人
・何かに夢中になる経験がしたい人
・言葉について考えたい人
『船を編む』は映画化、さらにアニメ化もされています。
小説を読むのは苦手という人も、映画やアニメから見てみては如何でしょうか。
登場人物それぞれ立場は違えど、
辞書を完成させたいという思いが心地よい熱意となって読者にも伝わってくる物語です。
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