楡井亜木子さんの『チューリップの誕生日』を紹介します。
主人公の一生懸命さ
続きが気になる
実はお仕事小説
【1行あらすじ】チューリップの誕生日(著者 楡井亜木子)
タイトル:『チューリップの誕生日』
著者:楡井亜木子
あらすじ:ライブハウスの支配人をしている三原の一言でベースを始め、ガールズバンドの欠員補充のオーディションを受けたユーリ。オーディションに合格し、学校生活と仕事に追われる中、10歳近く年の離れたフジシマに出会う。年の差恋愛小説。
【こんな人におすすめ】チューリップの誕生日(著者 楡井亜木子)
この本は下記のような人におすすめです。
・夢中になっていることがある人
・イケナイ男性との恋愛小説が好きな人
・年の差恋愛小説を読みたい人
好きなことを仕事にできることは嬉しいことです。
それでも忙しい日々が続くのは息苦しさを覚えることもあると思います。
懸命に今を生きている人には主人公に共感する部分があると思うのでおすすめです。
【感想】チューリップの誕生日(著者 楡井亜木子)
学校生活と仕事の両立
この小説を読むと、
・学校生活と仕事の両立の厳しさ
・子どもでも大人でもいられない難しさ
が分かります。
主人公のユーリは通っているライブハウス「キューリとミカン」の支配人、三原からガールズバンドのオーディションを受けることを薦められます。
見事オーディションに合格したユーリは、ガールズバンド「チェルシー・ガール」のベーシストとして活動を始めます。
ライブは夜に行われることが多いため、平日は昼間学校に通い夜にライブハウスに行き仕事をする生活が始まりました。
あたしは、タコメーターの針をいつもレッドゾーンに入れて走っている車だった。エンジンが、怒りながら回転する音が聞こえていた。そしてレースに参加しているように、ピットインの時間も秒単位で急かされていた。
楡井亜木子『チューリップの誕生日』ジャイブ株式会社(2007年9月16日 初版発行)p46
ユーリは思うように睡眠時間も取れない生活を送ることになりましたが、学校には通うという意思があるように感じました。
好きなことを仕事に出来て給料も貰えるのに、いつ爆発するか分からない状況でも、
忙しさを理由に学校を辞めたり一時的に休むという選択をしないことに、ユーリの強さを感じました。
単純な時間の足りなさだけではなく、
プロとして大人と一緒に働くユーリと学校の同級生との間に生まれていた感覚の違いや、
反対にまだ15歳という年齢であるのに大人の女性達に囲まれ働かなければならないというプレッシャーが、
子どもでも大人でもない難しさとなって、学校生活と仕事の両立の厳しさをより浮き彫りにしているように思いました。
ユーリとフジシマの関係
ユーリはフジシマにライブハウスの外で声を掛けられます。
フジシマは年齢は23歳、以前「キューリとミカン」のバーテンダーとして働いていたことがあるということは分かりますが、
それ以外は職業不詳で何をしているのかわからないような男です。
正直ユーリはフジシマのどこに惹かれたのか、私には分かりません。
「よく憶えとくんだよ。どんな奴でも、好きな男は好きな男だよ」
楡井亜木子『チューリップの誕生日』ジャイブ株式会社(2007年9月16日 初版発行)p38
これはチェルシー・ガールのメンバーであるエミの言葉です。
この小説のユーリとフジシマの関係はこの言葉が全てだと思います。
フジシマがどんな奴でも毎日忙しなく生きるユーリにとっては、息抜きができる居場所であったのでしょうか。
必死に生きていれば、他の誰かが目をかけてくれていることもあります。
「チューリップの誕生日」には続編「夜が闇のうちに」があります。
ユーリがどう成長していくのか、「チューリップの誕生日」を読んだ人には「夜が闇のうちに」も読んでいただきたいです。
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