佐藤多佳子さんの『明るい夜に出かけて』を紹介します。
テーマが面白い
リアリティがある
登場人物のキャラが濃い
【1行あらすじ】明るい夜に出かけて(著者 佐藤多佳子)
タイトル:『明るい夜に出かけて』
著者:佐藤多佳子
あらすじ:とある理由から大学を休学し深夜のコンビニでバイトをしながら一人暮らしをしている富山。深夜ラジオを聴くことが好きで、特にアルコ&ピースのANNが好きでリアルタイムに聴くため金曜の夜はシフトを入れない。コンビニのバイトとラジオをきっかけに気づけば周りの人と不思議と距離が近づいている。暖かな気持ちになれる物語。
【こんな人におすすめ】明るい夜に出かけて(著者 佐藤多佳子)
・ラジオが好きな人、アルコ&ピースのオールナイトニッポン(ANN)を聞いてた人
・人間関係に疲れた人
・ちょっと一休みしたい人
ラジオが好き、特にアルコ&ピースのオールナイトニッポンを聞いていた人にはぜひ読んでほしいです。
主人公がアルコ&ピースのオールナイトニッポンの話を語ることでとてもリアリティがある小説になっています。
タイトル『明るい夜に出かけて』からは一体どんな話なんだろうとストーリーが想像できませんが、
ちょっとそこまで出かけてくるといった感じの、今までいた環境から少し離れて一休みしてみるというような小説です。
軽い気持ちで手に取って読んでほしい一冊です。
【感想】明るい夜に出かけて(著者 佐藤多佳子)
登場人物が語るラジオの魅力!(オールナイトニッポン、JUNK…)
みなさんはラジオ聴いていますか?
この小説では主人公の富山をはじめ、ラジオが好きな登場人物がラジオを通じて距離を縮めていきます。
ラジオの魅力を感じることができる
この小説で主人公の富山が語っているラジオの魅力について紹介します。
ラジオの魅力①リアルタイム性から生まれる距離感
やっぱり、ラジオって、リアルタイムな文化だ。今流れてくるものを、今受け取る。
佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』株式会社新潮社(令和3年5月1日 発行)p51
富山自身は深夜バイトの関係上、ラジオを録音して聴くこともありますが、生放送で聴くことをオススメしています。
同じ部屋にいるんじゃないかってくらい近い。この謎の距離感こそが、ラジオの生放送だ。テレビじゃ絶対にない。
佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』株式会社新潮社(令和3年5月1日 発行)p226
そしてその生放送のラジオのパーソナリティとの距離の近さ。イヤホンをさして聴くと自分とパーソナリティしかいないような空間を味わえるとのことです。
ラジオの魅力②双方向性を持つ参加型のメディア
富山はお笑いのラジオを好んでいます。
ラジオ番組の企画で募集されたテーマに対し、メールを送り参加でき、パーソナリティからリアクションがもらえることがラジオの魅力だとわかります。
読まれたい。読まれないとチョーがっかり。読まれる頻度の高い番組を愛してしまう。
佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』株式会社新潮社(令和3年5月1日 発行)p170
お笑いラジオが、ネタを送って読まれる、双方向性を持つ参加型のメディアであることは確かだ
佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』株式会社新潮社(令和3年5月1日 発行)p207
昔はハガキでネタを送ることが多かったですが、今はメールやFAXが主流だと思います。
今でもハガキ職人と呼ぶのでしょうか。パーソナリティやリスナーから認知してもらい、繋がりが持てることも魅力だと思いました。
ラジオの魅力③好きなラジオ番組への愛
ナマで聴くしかないだろう。どこへ行くかわからないんだ。まさに秒単位で世界が変わっていくんだ。自分が変えることだって可能だ。短いメール一本で。
佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』株式会社新潮社(令和3年5月1日 発行)p59
富山はラジオ番組のなかでもとくにアルコ&ピースがパーソナリティのオールナイトニッポンが好きです。
アルコ&ピースのオールナイトニッポンへの愛がとにかく凄い。小説内では絶賛しています。
ラジオはテレビ以上に放送されている番組が多いです。全国放送のラジオだけではなく地域密着のラジオもあります。
好きな番組を見つけることができたら、富山のように夢中になれるでしょう。
ラジオが繋ぐ?人間関係
主人公の富山はあることがきっかけで、大学を休学し実家を出て一人暮らしを始め、深夜のコンビニでアルバイトをする生活をしています。
終始富山目線でお話しが進むのですが、富山の人付き合いが苦手オーラがにじみ出ています。
そんななかでアルバイトの先輩として登場する鹿沢が良い味を出しています。
温厚なバイトリーダーの鹿沢との出会い
鹿沢は人との距離感の取り方がとても素敵です。
コンビニではバイトリーダーとして頼りにされ、常連のお客さんとは良い距離感を保ち接しています。
そんな鹿沢と富山が距離を縮めるきっかけは富山の趣味のラジオでした。
熱く語れる趣味(=ラジオ)があること
富山は笑われても良いやと思い切って鹿沢にラジオが好きなことを話すのですが、
鹿沢の受け止め方が素敵でした。
時間をかけて富山と登場人物たちが距離を縮めていくことが読んでいてとてもほっこりする小説でした。
コメント