朝井リョウさんの『少女は卒業しない』を紹介します。
青春を味わえる
切なくなる
読みやすい
【概要】少女は卒業しない(著者 朝井リョウ)
タイトル:『少女は卒業しない』
著者:朝井リョウ
収録内容:「エンドロールが始まる」・「屋上は青」・「在校生代表」・「寺田の足の甲はキャベツ」・「四拍子をもう一度」・「ふたりの背景」・「夜明けの中心」
合併により取り壊しが決まっている高校で最後の卒業式を迎える彼女たちの物語。短編集。
【こんな人におすすめ】少女は卒業しない(著者 朝井リョウ)
・卒業がテーマの小説を読みたい人
・切ない青春小説が読みたい人
・さらっと小説が読みたい人
高校生の卒業という一度きりしかないイベントがテーマになった短編集です。
切なく、やるせない気持ちになる一方で、気持ちを伝えることで前向きになろうとする姿に青春を感じる作品になっています。各話の主人公たちが思い切りが良いのも印象的な一冊です。
THE青春というような青春小説を読みたい人にオススメです。
短編集で一話一話が短く読みやすいので、さらっと小説が読みたい人にもオススメです。
【あらすじ・感想】少女は卒業しない(著者 朝井リョウ)
エンドロールが始まる
ショートカットだった髪を伸ばして迎える卒業式。最後なのは図書室に行くことだけではなくて―。
『少女は卒業しない』の短編集の一つ目の作品が「エンドロールがはじまる」。
どんなストーリーなのだろうかとタイトルからワクワクします。
この「エンドロールがはじまる」では主人公の名前が出てきません。先生が呼びかける「作田さん」という苗字のみ。主人公の想いが伝わってきて切なくなりました。
同時に、『少女は卒業しない』はこのような舞台設定のお話だよと世界観を提示してくれるプロローグ的な作品と感じました。
屋上は青
卒業式の前日、高校を中退した幼馴染から1年ぶりにメールを受け取った。別々の道を行く幼馴染に私ができることは。
読了後の印象としては、私がアイドルを好きな理由の一つを言語化してくれたような作品だと思いました。
主人公の孝子の、別の世界に進む幼馴染に対する自分とは違うんだという思いと、幼馴染に抱く憧れに共感しました。また、幼馴染の不安にも触れ自分にできることを考える姿に、もどかしさと切なさを感じました。
在校生代表
卒業する先輩への想いを送辞に込めて。
主人公の亜弓が卒業する先輩への想いを、卒業式の日に在校生代表の送辞で告げる形で描いた作品です。
送辞の原稿がそのまま小説になったような作品なのですが、その場面、場面が絵になったように想像できました。
主人公の思い切りのよさが字面からも現れていてとても良かったです。こんな長い送辞はなかなかないような気もしますが、読み終わった後には大きな拍手を送りたいと思いました(笑)
この短編集のなかで一番のお気に入りの作品です。
寺田の足の甲はキャベツ
卒業式が終わった後、部活の集まりを抜け出した2人。私も言わなきゃいけない。
高校生の青春の切なさが際立った作品でした。言わなきゃいけないと徐々に覚悟を決めていく様子が辛かったです。
お互いに前からどこかで少しずつ思っていたのかな…とも思いました。
中途半端な気持ちで付き合ってたわけではないだろうし、理解できるけど切ないなと思ってしまいました。
四拍子をもう一度
卒業式の後に行われる卒業ライブ。ビジュアル系バンドの「ヘブンズドア」の衣装とメイクが本番前に盗まれた。出番が近づいてくるなか、二人の女子高生の想いが交錯する。
作中に登場する高校生バンド「ヘブンズドア」の名前とキャラクターが、高校生の悪ふざけという感じで面白いです。
でも正直、ダメでしょう!やって良いことと悪いことがあると言いますか、他にも方法があったようなという気持ちになってしまいました。
ふたりの背景
高校1年の秋、カナダから転校してきたあすかは日本の高校になかなか馴染めない。そんななか文化祭当日まで絵を描いていた正道に一緒に美術部に入部しようと声をかけた。
目的地に向かってまっすぐに歩いて行くことができるならば、その人はきっと、大丈夫だ。
朝井リョウ『少女は卒業しない』株式会社集英社(2015年2月25日 第1刷)p213
主人公のこの言葉が印象的でした。
あすかは正道と過ごす日々の中で、その姿に勇気づけられていたのかなと思いました。
高校生活は彼女にとって良いものとは言い難いものだったかもしれないけど、最後の約束に心を打たれました。
夜明けの中心
卒業式の夜に学校に忍び込んだまなみ。取り壊される前の学校での最後の別れ。
最後にこの作品とは…!悲しさと切なさが増します。
今までの作品とは別れの意味が異なります。
卒業式の夜に学校に忍び込んだまなみは、同じく忍び込んだ香川に出会います。
この2人がこの時にこの場所でこの会話をすることは、先に進むために大事なことだったのでしょう。
悲しさと切なさ、その先の別の始まりを感じることができる作品でした。
ここまで読んで作品の順番が卒業式の1日の時系列になっていることに気づきました。
自分の卒業式はどうだっただろうかと思い返したくなる作品でした。
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