石井睦美さんの『皿と紙ひこうき』を紹介します。
静かな場所で読みたい
自分の決断について考えたくなる
田舎に帰りたくなる
【1行あらすじ】皿と紙ひこうき(著者 石井睦美)
タイトル:『皿と紙ひこうき』
著者:石井睦美
あらすじ:山間の陶芸を家業にする集落に住む高校生の由香。家族、高校の先輩、突然の転校生・・・出ていく人と残る人の姿を見つめ何を思うのか―。
【こんな人におすすめ】皿と紙ひこうき(著者 石井睦美)
この本は下記のような人におすすめです。
・過去の自分と向き合いたい人
・田舎の景色に触れたい人
主人公は高校生ですが、現役の高校生よりは過去を振り返りたい大人に読んでほしい作品です。
この本を読むと、過去に自分がした決断について「だから今がある」と一筋の光を感じとることができます。
また、静かさを感じさせる風景描写が田舎の景色に触れたい人にもおすすめです。
【感想】皿と紙ひこうき(著者 石井睦美)
大分県日田市小鹿田の里がモデル
あとがきにて著者の石井睦美さんが大分県日田市にある小鹿田(おんた)の里(皿山地区)がモデルであることを明かしています。
この小説では主人公の由香が住む皿山は、
- 一子相伝の陶芸を家業としている集落ということ
- ”ぎーっ、とん。”という恐竜の鳴き声が昼夜問わず聞こえること
- 皿山から由香が通う高校へはバス通学で、平日は17時45分のバスが最終バスであること
が描かれています。
実際にどのような地域なのか調べてみたところ、日田市の公式YouTubeチャンネルに動画がありました。
山に囲まれた集落であることが分かりますね。
「ほんなごつ」
作中では主人公の由香を含め、登場人物のほとんどが方言で会話しています。
なかでも由香がよく「ほんなごつ」と言っているのが印象的でした。
「ほんなごつ」とは、
本当に
https://www.gengoya.net/dialect/honnakotsu/
という意味で、同意をする際に使われていました。
由香が使うとかわいらしい感じに聞こえました。
橋の向こう側
作中では大岡信さんの詩『青空』が引用されています。
主人公の由香はこの『青空』の詩と、自分の周りの人々の関係性を比べ思いを馳せています。
作中でこの詩を読んだとき、地元を出るという決断をした私はひとつの橋を渡った側の人間だなと思いました。
やっぱりいろんなことがつながっていく、とわたしは思う。
石井睦美『皿と紙ひこうき』株式会社講談社(2014年発行)p187
由香もいろんなことがつながっていくと考えているように、
その決断があったから今の自分がいて、今の環境があるんだなと思います。
地元に残るという決断をしていれば、その時はその時のまた違う自分がいるのでしょう。
誰もがどこかのタイミングでひとりで渡らないといけない橋はあると思います。
橋を渡っていない由香の目線から、渡った人、今まさに渡ろうとしている人の姿を見て、
自分自身の決断を振り返ることができる小説でした。
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